
近所というには少し遠いかも・・・。「little by little」というパン屋さんがある。フランスパンのバリバリガリガリした、歯ごたえの驚きとそのいおしさを求めるなら、違うお店がいい。気泡のきめが細かいので、迫力のある歯触りではない。でも、このお店のパン、混ぜるドライフルーツや具の組み合わせのセンスがなかなか良い。気泡が大きくないぶん、皮の部分だけトーストすると、焼いたお餅の表面のパリ感と香ばしさとドライフルーツの香気があがって、おいしい。一歩はずすと単なる「素朴なパン」になってしまうところを、うまいところに落としている・・・そんな感じのパン。
最近できるパンのお店は、結構レベルが上がってきている。パンが好きな私としてはありがたいことだが、それを商売にしている人にはきついことだと思う。以前、気に入っていた吉祥寺にあるブティック風のお店(これだけで判ってしまうとも思うのだが・・・)今となっては、はじめて食べた時のおいしさはどこかへ行ってしまって、食べても喜びが少ない。自分が変わったのもあるのかもしれないが、決してそれだけではないとも思う。毎日パンを食べるわけではないし、何軒かのお店を適当にローテーションしながらもいるわけで、その中でも行かなくなってしまう店もあれば、続く店もある。変わらないということは、守るべきところは守るが、それだけではない。職人さんの気概のようなものではないだろうか。だから、コーディネートされたり企画された商品を商う店は、より上を目指して自分が焼くということに対するプライドより、マニュアルが重い。そこは、ひとりの人間が長くつきあっていく店でもないし、店の側もそれを望む・・・というか考えてもいない。そういうことではないのだろうか。なんというか、万事インスタントで早くかたちになるものが求められている。わたしは、マニュアルに書かれていないこと、そこに重要なことがあると思うのだが、えてしてマニュアルに書いてあることが全てになってしまうことが多いと思うのだ。
わたしの仕事にしても、長く付きあっていこうという人にめぐり合えることは、希有なことだ。もっとも、イラストレーションの現場というのは、使い捨てのものでもあるのだが・・・たまにでも嬉しい出会いがあるのは、とてもありがたいことだと思う。