キッチュ
蜘蛛の糸から、70年代の音がする。
人間の目から見ても、グロテスクな色彩であまり関わりたくない感じを受ける。黄色みを帯びた縦糸は強靭で、獲物が逃れられるチャンスはない。青空にかかった巣に座する蜘蛛の姿は心を乱す何かを持っている。蜘蛛が仕返しをするとかそんな呪術めいたものも頷ける。
小学生のぼくの行動範囲と蜘蛛の生息範囲が重なっていたせいか、よくクモの巣に引っかかってずいぶんと蜘蛛の巣を壊したものだ。ねばっと張り付いた蜘蛛の巣の腹いせに、しっかりとそれを壊しては「それ見たものか・・・などと偉ぶっていたものの」その罰なのか、また蜘蛛の巣にひっかかる。そのくりかえし・・・これは、私が成長して動物の行動範囲から人間のそれになることで終止符がうたれるまで続いていた。
それにしても、壊されても壊されても、次の日には同じところに同じように蜘蛛の巣がかかっている。まるで、本当には壊わされることない蜘蛛の巣・・・それこそ怖いような感じがしていた。普通のこどもと同じで虫とか殺すことも多かった私だが、蜘蛛を殺した記憶というのはない。それこそ、呪いにかかってしまうような気がしていたからかもしれない。
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