さくらさくら

さくらさくら
 今年のさくらは、サッと咲いてさっと散るようだ。おかしな気候だったので、どんな花が咲くのか心配していた。杞憂だったのか、きれいなさくら。気のせいか、例年のさくらより色が濃いように思う。植え込まれたきっかけが、キナ臭い話しであろうと、わたしには理解しがたいことであろうと、やはりきれいだと思う。この時季ばかりは、今の日本が嫌いでも、うんざりしていようとも日本に生まれて良かったと思う。わたしも日本人なのだ。この、さくらの花を堪能したい。さくらの下で、酒を飲むではなく、ぼんやりと花を眺めたいと思う。
 若い頃などと書きたくもないが、20代の頃は桜の下で酒盛りもしたし、騒ぎもした。いまはだた、さくらの花をめぐり、立ちどまり眺められれば充分だ。
 梅の花はかおりを楽しみ。見て楽しむ。しかし、さくらのようにはなり得ない。さくらは、その木の過ごしてきた時間、ながめる時間、天候や心情しだいで、怖いぐらいに見え方の振れ幅のおおきなものだ。美しくありながら、恐ろしさ、狂気までも感じることがある。後からイメージを植え込まれたものであるにしても、ここまで日本人の感情に訴える花なかろう。
 今年のさくらは、緩むのが早い空気とあいまって、こころなしかやさしげな色合いに見えた。
 のんびり、さくらの下で眠るのもよいだろう。
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