
ここは以前は緑の海原だった。今はただただ茶色の冬の景色が広がっている。元々は湖の堤防に向かって下って上るような地形で、水田が広がっていた。5月に、この辺りに立つと緑の海原を少し上から眺めるような風景が広がっていた。その緑の草原を風が駆け抜ける。風が緑の波間に模様を描いていた。その中に立っていると自分が腕を振り風を操っているかのような・・・緑の波に翻弄されているかのようだった。薫風に包まれ心地よさを感じたものだった。今はただ平坦な土地が広がっている。おとなしくなってしまった海なれど、5月のあの頃になれば緑の海原はまた現れるのだろう。