この真鍮の塊とのつき合いは、かれこれ20年ほどになる。工作室のごみ箱から拾い上げてきたものだ。必要な形状から何かしら間違えて、ゴミになってしまったわけだ。わたしにとっては、ちょっとした拾い物だ。時にはペーパーウェイト、筆立て、金槌・・・と使い方しだいでいくつもの使い道がある。要は、立場の違いがそれを見る見方の違いにほかならない。作った側からすれば、目的の形以外は頭に無い・・・1キログラム近くもある真鍮の塊はわたしのとっては別のものに見えたという事だ。物というのは結局の所、見る側がどう見るかによって変わってくるもので、別の側面を見つけることができるなら意外な使い道があるものだと思う。様々な物と人間の関係も、相対的なものなのだろう。


