革の関係する道具だけの話ではないのですが。カッターのように、誰でも渡されてすぐ使える道具と言うのは、使い方次第で幅広い作業に使える・・・大げさに言えば「汎用性の極致の道具」と言えるものです。
専用の道具は、ある特定の作業だけをを効率良くするための物で、使う側に要求する技術や使い方・メンテナンスがあって初めて正しく機能するものです。そうした道具の中には、率直にいうと道具として練れてないものというものも存在します。思い込みや前提が強すぎて多分そういう道具になってしまったのだと思うのですが、販売されているものにはそんなものも当たり前ですが混じっています。それぞれの方法論があって出来上がった道具なので安易に否定はできないのですが、そうしたものが自分の使い方に合わない道具というものだと思います。
自分の理想とする道具は、特定の作業に適化されていながら使う側の手入れの範囲での使い方に合わせていける「自由度がある工具」。例えば「革包丁」や「ヘリ落し」などは、使い方に自由度がある「カタチ」が自分にとっては重要です。「道具に強制された使い方をせざる得ない。」そんな道具は、使わされている印象を受けてしまってその作業に失敗すると、その通りなのですが「お前の使い方が悪い」と言われているようで、居たたまれない。自分はヘタレなので「こんなふうに使うといいよ。」とか「そっちじゃなくてこっち。」とか、教えてくれるような道具。使っていると、デザインや作った人の意図が伝わるような、そんな道具は素晴らしいと思います。
例えば、革包丁にこうあって欲しいことは、自分のコントロールできる範囲で刃が向いて欲しい方向に向いてくれる・・・刃が浮いてほしくない時には、ちゃんと刃が入っていってくれるとか・・・曖昧なニュアンスだと柔らかく切れて欲しいとか、色々あります。特にタンニン鞣しの革の場合は、裁断するときに本当に硬くて刃がカッターマットまでいってくれないとかあったり、仕上がりに影響するので自分の使い方の要求に答えてくれる「革包丁」というのは、ありがたいものです。
これからもそういった道具が「作られ続けて出会える」そういった世の中であって欲しいと思います。